予防歯科
予防歯科
予防歯科とは、むし歯や歯周病になってからの治療でなく、なる前の予防を大切にする診療科です。お口の中の健康を保つため、定期的な歯科医院での「プロフェッショナルケア」と患者様の日常の「セルフケア」を両立させることが重要です。
歯は体の骨と同じ硬組織疾患と呼ばれる組織です。骨折してしまった場合はギブスで固定すれば骨ができて治ります。しかし、歯は同じ硬組織でも再生能力がありません(初期のむし歯は再石灰化します)むし歯ができて治療をおこなったとしても、人工的な対症療法でしかありません。お口の中の健康を維持するための根本は「むし歯から歯を守る」ことと考えています。
できてしまったむし歯に関しては「早期発見・早期治療」することで、最低限の範囲で治療をおこなうことができます。どれだけ歯科治療が進歩しても、精巧な治療をおこなっても、お口の中は常に細菌が繁殖している状態のため歯科材料は劣化します。
劣化した部分に隙間ができて、むし歯の再発がおこるリスクがあります。患者様は「治療すればもとに戻る」と認識されている方が多いですが、正確には「機能を回復させる」ことしかできないのです。
先天的にむし歯になりやすい方は一定数いらっしゃいますが、むし歯のリスクが高い年齢の時期と歯周病のリスクが高い年齢の時期は異なります。若いころはむし歯にならなかったのに、年齢を重ねて歯周病が原因で歯ぐきが下がり歯の間の隙間があいたことで、むし歯になりやすくなる場合もあります。また年齢を重ねて「ライフスタイル」が変化することで適切なセルフケアも変わっていきます。
むし歯や歯周病は「感染症」であり、一人ひとりの予防も大切ですが「家族単位」の予防も重要となります。ご家族でのスキンシップを通して伝染するため、家族全員のお口の健康を維持する必要があります。
また、お子さまへの「マイナス1歳からの予防歯科」、姿勢・歯並びに影響するクセ・呼吸の仕方を改善しながら「適切な歯並びの育成」「食育・栄養指導」をご家族の協力のもとにおこなうことが、「むし歯ゼロ」「きれいな歯並び」そして健やかなお子さまの成長につながります。
1~3ヶ月毎に定期検診に来ていただいても、当院でお口の中をきれいな状態にすることができるのは一時的になります。それまでの日常はご自身のセルフケアにかかっています。そのために「歯について学んでいただく場所」として、患者様ご自身が「歯を守れる」ようになっていただくことが最終的なゴールと考えています。それが「自分の体を知る」習慣を作り、健康意識の向上から全身の健康の維持につながります。
スウェーデン政府は、「予防歯科」の考えを国家的な歯科医療の方針として採用し、歯科医院で「予防歯科」を受診することを義務化しました。今では、国民全員が定期的に口腔衛生指導、治療を受けることができるようになっています。
20才未満の国民は、チェックも歯科医院での治療も無料です。子どもの時から歯の健診が当たり前としてとらえられ、歯の健康づくりが生活習慣として定着しているのです。
日本では、「年をとれば歯を失うのは仕方がない」と考える人も多く、スウェーデンでも1980年代ころまでは同じでした。ところが現在、70才で自分の歯が何本残っているかの平均値を比較すると日本では16.5本ですが、「予防歯科」を実践してきたスウェーデンでは21本と、大きな差があります。
親知らずを除いた成人の歯の本数は28本ですから、スウェーデンでは、ほとんどの国民が70才になっても若い時とさほど変わらない歯の本数を維持していることになります。
スウェーデンでは、子どもの歯磨きについて、出産前から歯科医による両親への指導が始まります。また、乳児でも歯が生え始めるころから歯科医院でのお口の中のチェックが義務づけられています。治療ではないので、子どもにとっては歯科医院は「怖い」「痛い」という印象にはならず、「歯について楽しく学ぶ場所」となります。
スウェーデンでは、歯科医を「頼れるパートナー」と認める人が26.3%、「好きな人・憧れの人」と考える人が16.4%にものぼりました。一方、日本では歯科医を「頼れるパートナー」とする人が17.2%いるものの、「嫌いな人・苦手な人」と答える人が14.0%もいます。スウェーデンと日本では、歯科医に対する意識が大きく異なります。これも、70才での残存歯数の差につながっていると考えられます。
日本とスウェーデンでの、セルフケアの取り組みについても違いがあります。日本では使用率の低いデンタルリンスやデンタルフロスの利用が、スウェーデンでは定着しています。スウェーデンでは「ブラッシング以外にデンタルフロスやデンタルリンスも使うのは当たり前」「どちらかというと当たり前」という考え方の人が約68%にのぼります。
一方、日本では「ブラッシングだけで充分だと思う」「どちらかといえば充分だと思う」という人が51%と半数を超えます。普段からセルフケアで活用している口腔ケア用品においても、スウェーデンでのデンタルフロス使用率は51.6%で日本の20.5%の2倍以上、デンタルリンスの使用率は39.5%で、日本の24.0%に比べて高い割合です。スウェーデンでは、短い時間でも、効率のよいセルフケアが実践されています。
レントゲン撮影や歯周病検査を行い、むし歯や歯周病の状態、また、将来むし歯や歯周病になりやすそうな部分をチェックして説明します。すぐに治療が必要な歯があった場合には応急処置を行います。
セルフケアのお悩みや状況を確認し、患者様に合わせた歯ブラシの選び方や磨き方、デンタルフロスなどの口腔ケア用品の使い方をアドバイスします。
専用の器具を使い、細菌のかたまりや歯石を除去します。
デンタルフロスや歯間ブラシを用いて、歯と歯の間のプラーク(バイオフィルム)をからめとります。
薬用成分の高いペーストを用いて歯の表面を磨きます。歯の表面の傷をととのえ滑沢にして、細菌や着色がつきにくい歯にします。
エアーフローは歯の表面の清掃を行う機械の一種で、非常に細かなパウダー粒子をジェット噴射で歯に吹きつけることにより、歯にこびりついた汚れを効果的に落とすことができます。一般的には、歯の着色やヤニを除去する用途で使用されますが、通常使用する機械では落とせない歯の表面についたプラーク(バイオフィルム)の除去にも効果が高いため、歯周病治療の際にもパウダーメンテナンスを積極的におすすめしています。
粒子の直径はわずか14μmと微細で、歯の表面へのダメージを最小限に抑えることができます。歯ぐきや歯を傷つけないよう、やさしくプラーク(バイオフィルム)を効果的に除去することが可能です。